20: ◆JgoilToZJY[saga]
2016/06/20(月) 06:20:23.40 ID:9fy5FiS10
案じた通り、洞窟内部は危険だった。
足場が悪くて、何度も転びそうになっては、京ちゃんに受け止めてもらってたし。いや、それだけではなく。
毒牙蝙蝠は全体に生息していたし、小さな石に悪霊が宿って怪物化したとされるフユウツブテも厄介だった。
京ちゃんは、浮遊礫の攻略法は、鋼鐡の刃だと知っていた。石に刃物なんて、と普通の人は考えるだろうけど、浮遊礫は単なる石ではない。石に見える怪物だ。
私と京ちゃんは無我夢中に短刀を振りまくり、なんとか事なきを得た。
「その生き物を知っていれば、恐れる事はない」
京ちゃんは道中、この言葉をよく口にした。
知らない生き物は危険だが、知ってる生き物なら何とか対策を練られると。
きっと、元々はあの子の言葉なんだろうな。そうなんでしょ? 京ちゃん。
「……あれは!」
私たちは、立ち止まった。
いた。
馬が、いた。
私たちは、探していた馬を見つけたのだ。
「カピー!! 無事だったか!!」
京ちゃんは声を荒げて馬に駆け寄った。
京ちゃんは自身の愛馬にカピーと名付けていた。理由を尋ねてもよくわからない、と。
名付けようとした時、ふっとその単語が頭の中に舞い降りてきたらしい。全く、ただの思いつきを大袈裟に言い換えちゃってさ。
カピーは怪我もしていないようだった。元気そのもので、しっかりと京ちゃんを認識している。
それも頷ける。どうやらこの辺りには、不思議と危険な生き物はいないようだった。毒牙蝙蝠も、浮遊礫も、不気味なほどいない。
さっきまで大量にいたのに、この辺りにはいないのだ。それは、この先が危険だという悪いしるしでもあった。
さて。馬が無事だとわかったなら、正直、京ちゃんはこの洞窟を引き返せる筈だ……
「馬がいる。ってことは、優希も近くにいるって事だ。待っててくれよ、カピー」
意外な事に、私は安堵した。
そして私は、優希ちゃんの事を考えた。すぐ行くから、待ってて。どうか、生きてて。
「咲? どうした? 行くぞ」
「あ……ううん、何でもない。行こう」
きっとすぐに会える。
そんな予感は、的中した。
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