39: ◆JgoilToZJY[saga]
2016/06/20(月) 06:45:10.19 ID:9fy5FiS10
京ちゃんの姿が次第に小さくなって、見えなくなっても、私は動けずにいた。
ずっと地平線を眺めていた。蜃気楼が映る訳でもないのに。ずっと。地平線と、空の青さを。
結局、伝えられなかったな。
それでも、きっと良かっただろう。
訣れの言葉で、京ちゃんを苦しめるよりよっぽど良い。
これで良かったんだ――…
――…
心にぽっかり穴があいた感覚。
私は優希ちゃんに、京ちゃんがいない世界とは、京ちゃんが死んだ世界だと言った。
しかしながら、改めねばならないだろう。
また会えるなんて、戯言だと私は気付いた。今の世の中、そう甘くはない。
会えない距離に京ちゃんが居るという事は、即ち、別の世界に京ちゃんが居るという事だ。
京ちゃんのいない世界では、優希ちゃんの言う通り、死ぬしかないだろうか?
「ふふ……その通りだったみたい」
やはり、私もなんとかして、都に向かう必要があるようだ。
その事がはっきりしただけでも良かった。
生きる活力が漲ってきた。
さて、都へ立ち入るには通行証が必要だ。
当然、私にそれを貰えるあてはない。
ならば私も京ちゃんみたく勉強して、入試に合格するか? 学生になれば当然通行証を貰える。
不可能ではないだろう。でも現実的とは言えない。京ちゃんが膨大な時間を勉強に充てられたのは、京ちゃんの家が村で随一の富豪だからだ。
庶民である私は、家業を手伝う時間に追われ、勉強に充てる時間を京ちゃんほどは作れない。そして合格する頃には間違いなくオバサンになってる。それじゃダメだ。
そうだ、竹井さんに助言を貰いにいこう。あの人は人脈もあるし、何らかの手段を教えてくれるかもしれない。
心が騒めいていた。
この時は、私に生きる活力が漲っていたからだと思っていた。
でも実際は、今後京ちゃんと私に身に降りかかる災いを、予感していたからかもしれない。
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