7: ◆JgoilToZJY[saga]
2016/06/20(月) 06:04:25.94 ID:9fy5FiS10
「『以上で、私の言葉とします』」
長いセリフを続けた後、京ちゃんはふっとため息を吐いた。
「どうだった、咲」
「……完璧、なんじゃない。私から言う事は、何もないよ」
思った通りの感想を述べた。専門家でもない私の観点からすれば、直す点なんて見当たらないくらいだ。
本当に緊張してるんだろうか。いや、相手が私だからかもしれない。村の皆の前で話すとなれば、やはり緊張するものだろうか。
ともかく、これ以上練習する必要はないように思われた。
「……そうか? まだまだ、だけどな。もっと強調するところと平坦に話すところの感情の付け方を……」
「ちょっとちょっと、何それ? 京ちゃんどこまで拘るの? 政治家にでもなるつもり?」
「うるせえ。いいだろ、いくら練習したって、しすぎることはないんだし」
本人がしたいというなら付き合うしかない。
「『わたくし須賀京太郎は、清澄村に生を受け、15年間、育ててもらってきました』」
「……」
やはり、声の調子は悪くない。
噛み噛みだった一週間前とはまるで違う。今日のは、決意のようなものまで感じる。
"練習"を続ける京ちゃんの目を見た。
不思議な感じだ。
あの日から長い時が流れた。それなのにその目は、初めて出会ったあの日と変わらず、けがれない。
その目でずっと、私を見ていてほしいのに……
「『緑の丘から眺める夕焼けはひときわ美しく』……さ、咲!!」
「っ! な、なに、京ちゃん?」
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