9: ◆JgoilToZJY[saga]
2016/06/20(月) 06:06:52.21 ID:9fy5FiS10
「はぐっ。もぐ、もぐ……」
殺した蛇を串刺しにして火を通して、噛り付く。
品性があるとは言えないが、ここでは一般的な食べ方だ。
昔、この村にやってきていた、桃色の髪をしたあの子は、この光景に目をひん剥いていたけれど……
……あの子の事を、どうして思い出してしまったのだろう。やはり今日が……
京ちゃんが、ミヤコに向けて旅立つ日だから、だろうか。
「やっぱり、練習の必要、もうないよ、京ちゃん」
「ええ? でも……」
「聞きたくない。村のみんなにさよならを言う、練習なんて」
「……」
「私はもう、聞きたくないよ……」
「……済まん」
「こっちこそ、ごめん……別に、聞きたくないから練習はいらないって言ってるんじゃないよ? でも、もう充分だなって、思って……」
「……そうだな。なんか……」
「……京ちゃん?」
「いや、何でもない」
会話が途切れてしまった。
やってしまった。私のせいで、変な雰囲気にしてしまった。
食事の咀嚼音だけが、場に響く。
そう、京ちゃんは、今日、村を出る。
都の大学に入学するためだ。
たくさん勉強して、試験に合格した。都へ向かう馬も、村のみんなのお金を出し合って購入した。
京ちゃんは馬なんて高価だから要らない、って言ってたけど、京ちゃんのお父さんや村の大人はお祭り気分でお金を出し合った。
みんな、この小さな村の若者が国から有望と認められたのが、嬉しくてたまらないようだった。京ちゃんのためにできる支援は全て行われた。
京ちゃんに村を出て欲しくないと思う人は、少なかった。
京ちゃん、私は――…
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