過去ログ - 高垣楓「あ、まぁ酒でも一杯！」 -SS速報VIP

過去ログ - 高垣楓「あ、まぁ酒でも一杯！」

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1: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/24(金) 04:33:58.47 ID:FhA+hcXC0
　
※　このssにはオリジナル設定やキャラ崩壊が含まれます。
　
===１「楓、酒との遭遇」

「これはお祝いのお酒だから、子供の楓でも飲めるんだぞ」

　そう言って持っていたコップに並々と注がれた未知の液体は、
　少々ドロリとしていたうえに、つんと強い香りを放っていて。

　
　人生において、初めてお酒というものに触れた小学校の入学祝い。
　
　憧れだった真っ赤でピカピカなランドセルと一緒に、
　めでたいからと祖父が持って来たのが甘酒でした……それも、一升瓶に入った大きなやつを。

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2: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/24(金) 04:36:04.29 ID:FhA+hcXC0
　
「ねぇ、じぃじ」

「どうした、楓？」

3: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/24(金) 04:37:46.15 ID:FhA+hcXC0
　
「ま、待ちなさい楓っ！」

　祖父の止める声にも耳を貸さず、中身を全部捨ててしまいました。
　

4: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/24(金) 04:40:45.52 ID:FhA+hcXC0

　ですが、敵は私よりも一枚上手でした。
　
「ふっふっふ……しかしな、それでじぃじのお祝いから逃れたつもりか～？」

5: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/24(金) 04:42:09.12 ID:FhA+hcXC0
===

　ちろりと唇から舌先をのぞかせて、私は甘酒の注がれたコップの一つを手に取りました。
　
　顔に近づけると、やはりなんとも言えない匂いがして。

6: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/24(金) 04:44:14.97 ID:FhA+hcXC0
　
　前に甘酒、後ろに祖父。

　その道の先で待つ真っ赤なランドセルを迎えに行くためには、絶望的な状況でも前に進むしかありません。
　

7: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/24(金) 04:48:28.25 ID:FhA+hcXC0
　
「だ、大丈夫か!?　楓！」

　せき込む私の背中を、祖父が慌ててさすります。

8: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/24(金) 04:49:26.84 ID:FhA+hcXC0

　それからというもの、祖父は何かあるとすぐ「お祝いだ」、「めでたいな」と言っては甘酒を私に振る舞いました。
　
　最初のうちは嫌々付き合っていた私でしたが、
　

9: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/24(金) 04:50:44.25 ID:FhA+hcXC0
===２「楓、上京す」

　人の成長と時間の流れは速いもので、そうこうしているうちにどうにか私も高校を卒業し、大学に通うために上京することに。
　
　勿論、お別れの日の夜は、甘酒で乾杯です。

10: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/24(金) 04:52:35.81 ID:FhA+hcXC0

「人付き合いに困った時には、『あ、まぁ酒でも一杯！』飲みにけーしょんってな！」

「……ホント、お爺ちゃんったら」

11: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/24(金) 04:53:39.67 ID:FhA+hcXC0
===

　地元を出られるのなら、別に大学自体はどこでも良かったんですけど。
　ほら、東京の人は、周囲の人間に無関心って言うじゃないですか。
　

12: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/24(金) 04:56:02.98 ID:FhA+hcXC0
　
　いえ、日々の支払いが追いつかないわけじゃ、無いんですよ？　
　
　私個人の、蓄えは十分すぎる程にありましたし。
　でも、毎月のように祖父が仕送りを送って来てくれるんです。それがちょっと、心苦しくって。

13: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/24(金) 04:56:50.84 ID:FhA+hcXC0
　
「……三点で、七百六十五円になります」

「えっ、なに？」

14: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/24(金) 04:59:15.63 ID:FhA+hcXC0
　
「では、千円お預かりいたします」
　
　お金を受け取った店長がお釣りを渡している間に、
　私はレンジから出したお弁当と、カウンターの上の商品をビニール袋に詰めこんで。

15:名無しNIPPER[sage]
2016/06/24(金) 12:34:36.92 ID:9dB6FAUCO
ちょっとポンコツな方の高垣さんか

16: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/24(金) 23:25:38.78 ID:FhA+hcXC0
===

「はぁ……またやっちゃった」

　あかね色に染まる空の下、人気の無い公園で。

17: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/24(金) 23:37:21.68 ID:FhA+hcXC0
　
「…………ぷはぁっ！」

　一気に半分ほど飲んでから、大きく息をつきました。まだ若い女が公園のベンチで一人酒。
　こんな姿を、もしも誰かが見ていたらどう思うだろう。

18: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/24(金) 23:38:47.82 ID:FhA+hcXC0
　
「気をつけてるつもり、なんだけどな」

　言い訳をのせた呟きを、誰に聞かせるでもなく吐き出して。
　思い返すのは、これまでに就いた様々なお仕事のこと。

19: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/24(金) 23:46:58.00 ID:FhA+hcXC0

「要領は悪いのに、よう、料理はできるのな……うぅん、イマイチ」

　思いついたことをすぐ口に出す、悪い癖。この癖のせいで、仕事中にも何度注意されたやら。
　

20: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/24(金) 23:50:55.89 ID:FhA+hcXC0
　
「貴女、また嘘をついている。心を欺く、嘘をついている」

「……私は、嘘なんてついてない」

21: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/06/24(金) 23:55:38.16 ID:FhA+hcXC0

「それは、なに？」

「それは……その、理由は……」

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