過去ログ - 男「リビングデッド・ジェントルマン」
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◆XkFHc6ejAk
[saga]
2016/07/20(水) 19:34:28.30 ID:CQzb48lm0
男「……此処を超えれば、「アレ」が……」
男(思えば、この身体にされてから何年も経った)
男(痛覚が無いというものは、非常に不便なものだった)
男(力加減が全く出来ない。何度も知らずに舌を噛み潰した)
男(手足の筋肉が千切れては、呪いの力が治癒――と言うよりも、その筋繊維を無理矢理繋ぐ)
男(うっとうしい事に、身体が動かせなくなるような傷のみに、その治癒が発動する。動けるような傷は治らない)
男(まるで「お前は動かなければならない」とでも言う風に)
男(見る事は出来る。聞く事も出来る。考える事も出来る。だが、それだけだ)
男(この身体になって以来、左胸には呪いの力が籠っている)
男(呪われた血が冷たい身体を駆け巡っている。腹は空かない。性欲は無い。睡眠も摂れない)
男(出血はするが、呪いの力が失った分の血を補充する)
男(文字通り、動く死体となった。何度も死のうと思った)
男(しかし、それは無理だと気付かされた。魂自体がこの身体に縛り付けられているからだ)
男(例え海に沈んだとしても、身体をグチャグチャにされたとしても、燃やされて灰になったとしても)
男(私の思考は留まり続けるだろう。それならば、まだ自分で動ける方がましだ)
男(何故神がわざわざ目と耳、手足を使えるようにしたのか)
男(きっと……そうやって視線を浴びながら、生き続けさせるつもりだったんだろう)
男(痛みを感じない分、心の苦痛はより強くなる)
……どうやら、死んだままこの身体に縛り付けられたみたいだ。
でも、安心してほしい。もうあの神は居ない。君が死ぬ事もない。だから……
――化け物!! 来ないで!
男「……「だから」、か」
男(私はあの時、何を言おうとしたのだろう?)
男(まあ、どうでもいいか)
男(私は本来、存在してはいけない存在だ)
男(こうして永遠に考え続ける日々も――もう終わりだ)
男(全く楽しくなかった事は……無いけれど)
男(もう、心残りはないはずだ)
男「……行こう」
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