43:名無しNIPPER[saga]
2016/06/30(木) 23:47:26.67 ID:4Q6l07Joo
しばらく呆然と見上げた後に、彼は激怒の叫びを上げた。
感覚の消えた右腕を、岩石の壁に叩きつける。
「神よ! なぜあの娘を殺した!」
44:名無しNIPPER[saga]
2016/06/30(木) 23:48:32.31 ID:4Q6l07Joo
声は吹雪にかき消された。
自分にさえも聞こえていなかった。
彼は壁に指を食い込ませた。
45:名無しNIPPER[saga]
2016/06/30(木) 23:49:05.02 ID:4Q6l07Joo
「神よ! なぜ俺の家族を奪った! なぜ俺を一緒に連れて行かなかった!」
彼がまだ幼かったころ、やはり村では病が流行った。
両親と妹は死に、彼だけが生き残った。
46:名無しNIPPER[saga]
2016/06/30(木) 23:49:35.24 ID:4Q6l07Joo
喉が熱い。
目が熱い。
視界は白く濁っている。
47:名無しNIPPER[saga]
2016/06/30(木) 23:50:05.99 ID:4Q6l07Joo
「怒りんぼさん、久しぶり」
声がする。どこか遠くから。
48:名無しNIPPER[saga]
2016/06/30(木) 23:50:43.70 ID:4Q6l07Joo
顔を見られれば何よりだけれど、と彼は言う。
そこまで高望みはできないよな。
「うん……ごめん」
49:名無しNIPPER[saga]
2016/06/30(木) 23:51:10.65 ID:4Q6l07Joo
彼は今度こそ大声を上げて泣き出した。
そんなに泣かないで、と何か優しいものが頬を撫でる。
わたしまで悲しくなっちゃうから。
50:名無しNIPPER[saga]
2016/06/30(木) 23:52:36.81 ID:4Q6l07Joo
彼はあの時ずっとしかめ面だった。
笑ってもないし泣いてもいない。
でもしかめ面ってよく見ると、泣くのをこらえる顔に似てるんだ。
51:名無しNIPPER[saga]
2016/06/30(木) 23:53:03.21 ID:4Q6l07Joo
目を開けると夕日が赤かった。
周りを見回してもそこは吹雪の山ではないし落下の最中でもなかった。
見下ろすとお墓がある。
52:名無しNIPPER[saga]
2016/06/30(木) 23:53:30.59 ID:4Q6l07Joo
怒ってばかりの人がいた。
彼はいつでも怒ってた。
年がら年中朝から晩まで怒っていたし、多分夢でも怒ってた。
53:名無しNIPPER[saga]
2016/06/30(木) 23:53:59.43 ID:4Q6l07Joo
おわりサンクス
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