4:名無しNIPPER[saga]
2016/07/01(金) 01:47:54.85 ID:YGge3a1w0
それから、私は初めて飲む『おいしい日本酒』の魔力にすっかり取り込まれて、いつもなら考えられないペースでどんどんお酒を飲んでしまった。
気が付いた時には、私の前には開いた杯が随分と並ぶことになっていた。
そう、私は素敵な酔っぱらいに変身したのだった。
「私、実は、高垣さんに憧れてモデル業界に入ったんです……初めて高垣さんの写真を見た瞬間に、もう、雷に打たれたみたいになって、高垣さんが載っている雑誌を揃えられる限りで揃えて、高垣さんみたいになりたくて……。でも、えへへ、実際に会ってみたら、そんなの無理ってくらい、高垣さんは本当に、本当に綺麗で……高垣さんのような人には、どうやったらなれるんですか?」
完全に酔いが回った私は、高垣さんにそんなことを言った。
「……私は、何も、特別なことはしていませんよ」
高垣さんは静かな声で言った。
「……そう、私は、何も……」
そう呟いて笑う、高垣さんの顔は、どこか――
――そこで私の記憶は途切れている。次の記憶は、見慣れた自宅の玄関だった。
「ふぇ……? えっと、昨日は……」
目を覚ました私は、ゆっくりと昨日のことを思い出した。高垣さんと初めて二人で仕事をしたこと。高垣さんを飲みに誘ってしまったこと。なんとそれが受け入れられたこと。高垣さんに連れて行ってもらったお店の料理とお酒がとてもおいしかったこと。夢のような時間、そして。
そのまま酔って、高垣さんに言ってしまったことを。
「ああああああああああああああああああ!」
私は頭を抱えて叫んだ。ごろんごろんと廊下の上を転がった。そのままリビングにまで行こうとしたらドアに思い切りぶつかった。ごすっ、と鈍い音。頭を打った。
「……痛い」
私はいろんな意味で涙目になりながらひとりぼやいた。
……次に高垣さんと会った時、全力で謝ろう。
私は誓い、とりあえず、たんこぶができていないか確認することにした。
よかった、できてなかった。
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