過去ログ - 速水奏「The Dark Side of the Moon」
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14:墓堀人[saga]
2016/07/01(金) 12:42:10.82 ID:kj4bVlfs0
「どうぞ」


コトリ、という音をたててグラスがテーブルに置かれる。



「ありがとうございます」


文香の細い指がグラスの足を掴む。

私は彼女の斜め側のソファに座って、自分のグラスを彼女に寄せた。


「それじゃ、久しぶりの再会を祝して、かしら?」

「ええ、そうですね…」


「「乾杯」」


カチン、と小さく音が弾けて、二人同時にそれを口に含む。

葡萄の果肉をそのまま液体にしたような瑞々しい香りとやや過剰な甘みが口の中に広がる。

あまり甘すぎるお酒が好きじゃない私には少々キツいのだが、アルコール自体あまり得意でなさそうな文香にはちょうどいいのかも知れない。

目の端に映る彼女の口元からは「ほう」と甘い吐息が漏れて、しなやかな表情が僅かに緩んだ。


「気に入ってもらえたかしら?」


私がそう尋ねると、彼女は艶のある声色で答える。


「ええ、とても…やはり奏さんは大人ですね……こんなに美味しいものを知ってるなんて」


そういう彼女の表情からは無垢と色気が混ざりあう、不思議な色に染まっていた。


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