過去ログ - 速水奏「The Dark Side of the Moon」
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21:墓堀人[saga]
2016/07/01(金) 12:46:34.87 ID:kj4bVlfs0
「好きだったと言っても…遠くから見ているだけで…何かを行動に移した事は……殆どありませんでした。私にとってあの人は太陽のように眩しくて、ただただ…遠くから彼の姿を眺めて…たまに会話するだけで満足していました……今思い返しても…子供のような恋愛だったと…恥ずかしくなってしまいます。」


彼女はまるで物語の語り部のような静かな話し方で訥々と話していく。


「それでも………彼の事が好きで…好きで…好きで………少しだけ前を向いて…少しだけ彼と近づきたかったんです…」


僅かに覗いていた青い瞳が、暗闇に引き込まれるように黒髪に隠れる。


「ですが…前を向いた先にいたあの人は……すでに別の方のモノだったのでした…」


私の脳裏にあの日の光景がフラッシュバックする。

あの日あの時、雨が降りしきる駅前で、彼と彼女が交わしたキスと届かぬ声を。


ぞくり


濡れてもいない私の肌が、何故だか急に冷えていく。



「私は生まれて初めて…人を呪いました……彼と彼女と……そして誰より…弱くて情けない自分の事を…」



そう語る彼女の肩には力が篭り、わずかに震えて見える。



「何度も襲う暗い気持ちと…醜い感情に流されて…自棄になったこともありました…」



私もだ。


私も自分を棄て、暗く、醜いそれに身を任せた。

今でも夢に見る悪夢の記憶。

絶望、諦観、そして後悔。

黒く暗い、激しい渦を湛えた泥沼。

あの耐え難い地獄をこの子も経験したと言うのだろうか。


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