過去ログ - 速水奏「The Dark Side of the Moon」
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26:墓堀人[saga]
2016/07/01(金) 12:51:41.13 ID:kj4bVlfs0

「文香、私貴方が妬ましいの」

「…それは…どうしてですか?」


彼女の声は平坦だ。


「私と同じなのに、私と違うから」


彼女はピクリとも動かない。


「貴女が表で、私は裏側。貴女が輝きの世界に生きる頃、私は暗い星の向こう」


もう一度涙がこみ上げる。明るい世界歩けなかった悲しみが、腹の底からこみ上げてきたのだ。

同じ星の上なのに、違う世界に生きてきた彼女への暗い気持ちが、ゆっくり首をもたげてくる。



「そう…ですか…」


そう言って彼女は私の肩に手を伸ばす。首の後ろで両腕が出会った瞬間、彼女は強くゆっくりと私を抱きしめた。


「それでも貴女はここにいます……こうして手を伸ばせば…貴方の裏側に触れる事が出来ます…」


彼女の体温を身近に感じる。

まるで2人が1人になるような、心地の良い温度。


「月に暗い部分なんてありません…どんな星も…誰かに照らされなければ全て真っ暗なんです…」


彼女が私の耳元で諭すように呟く。

私は意味を知るより先に、彼女の体を抱き返していた。


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