過去ログ - 開かない扉の前で
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18:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:32:28.47 ID:BFmKl9Djo

「本人に聞けよ」

「だって、もう死んじゃったし」

「そりゃそうだ」、とケイくんは楽しげに笑った。
 わたしは彼の、こういう取り繕わないところが好きだった。
 
「わたしは悲しい」。でも、「彼は悲しくない」。それは本当のことだ

 だったら、わたしの感情を鏡写しに真似されるよりは、まったく気にならないと笑ってくれた方がだいぶやりやすい。
 こっちだって神妙そうな顔をせずに済むし、文句だって言いやすい。

 取り繕った言葉だって言わないで済む。 
 気遣われたら、平気な顔をしないといけない。大丈夫だって強がらなきゃいけない。

 でも、彼にそんな態度をとられると、わたしは反対に、ちょっとくらい気を遣ってくれてもいいじゃないか、とか、
 そんなめんどくさいことを考えそうになって、そのちょっとした不満が鼻の奥をつんと刺激して、
 不覚にも、泣きそうになる。

 そういうとき、彼は決まってこっちを見なかった。
 おかげでわたしは涙をこらえる理由が見つけられなくなって、我慢できなくなる。

 ケイくんは、何も言わない。からかいも、笑いもしない。
 だから近頃のわたしは、彼といるといつも、最後には泣き出してしまう。




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