19:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:34:06.36 ID:BFmKl9Djo
それでも五分もしてしまえば、泣き続けるのにも疲れてくる。
尽きない悲しみがあったとしても、それをずっと貫けるほど肉体は付き合いがよくない。
彼は気を遣わないわけじゃない。
必要以上に気を遣わないことが、気遣いすぎだと言えるくらいの、彼なりの気遣いなのだろう。
疲れるくらいに泣いてしまったあとは、赤い目を拭って、息をととのえて、滲む視界をもとに戻さなきゃいけない。
わたしがそうなるまで、ケイくんは黙って煙草を吸っている。
やがて落ち着いた頃に、タイミングを見計らったみたいに、なにかを話しかけてくる。
そのときだってきっと、深い意味なんてなかったんだと思う。
「……そういや、死んだ人に会える場所があるって噂、聞いたことがあるな」
頭の奥に宿った痛みに額をおさえたまま、わたしはケイくんの方を見る。
彼は、しくじった、という顔をした。
たぶん、思わず口をついて出てしまった話題が、悪趣味なものに思えたのだろう。
彼にはそういう、変な潔癖さがある。
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