33:名無しNIPPER[saga]
2016/07/05(火) 23:39:22.58 ID:b+Qvcd5ho
そうしてそれから十日もしないうちに、今度は海外で地震が起きた。
コンビニの募金箱は、それまでは関東から東北に及ぶ広範囲の豪雨災害への義援金を目的とするものとされていたが、
地震が起きた翌日には、百万人が避難したチリ沖地震の被害への義援金へと名目を変えていた。
いずれにしてもわたしの周りでみんながしていた話はといえば、
チリの地震や津波警報のことでもなければ、他県で起きた土砂崩れのことでもなく、
インパクトのある沈んだ道路の映像のことでもなければ、死者数や被害を被った建物の数のことでもなかった。
全国ニュースでは一度しか流れなかった橋を通れない不便さ。
それが一番の話題だった。
つまり、そういうものなのだ。
被害の大きさや関わった人間の数が物事の重大さを決めるわけではない。
近さが、それを決める。
わたしにとっては、中国で爆発事故が起きようとバンコクで爆破テロが起きようとそれはさして重大なことではなく、
信号待ちの間にひき逃げされた男の、どこにでもあるような他愛もない死の方が、よほど大きな問題だった。
世間から見れば大きなはずの問題が、わたしにはとても些細なことで、
世間から見れば些細なはずの問題が、わたしにはとても重要だった。
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