過去ログ - 開かない扉の前で
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52:名無しNIPPER[saga]
2016/07/07(木) 00:59:55.98 ID:btuqrQDio

 入り口からは細い通路のようになっていて、脇にはチケット売り場のようなカウンターがあった。
 わたしたちは当然のようにそこを素通りする。

「ケイくん、ねえ」

「なに?」

 声を掛けても、彼はこちらを振り返らなかった。

 なにかがおかしいとわたしは思った。でも、何がおかしいのかは分からない。

 そうこうしているうちに、ケイくんはミラーハウスの中へと入っていく。
 わたしは覚悟をきめて彼の背中を追いかける。

 万華鏡のなかに入り込んだような気分だった。

 迷路は薄暗く、青白い光に照らされている。
 想像していたよりもずっと、意識が混乱した。足元がぐらぐらして、立ちくらみを起こしそうになった。
 鏡にうつった自分自身の姿を視界の端に見つけるたびに、ばくばくと心臓が震えた。

「ね、ケイくん……」

 ケイくんは返事をせずに、慎重な足取りで、迷路を進み始めた。

 何かがおかしい、とわたしはもう一度思う。

「なにか、変な感じがしない?」

「変な感じ?」

「なんなのかは、よくわからないんだけど……」

 



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