過去ログ - 開かない扉の前で
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7:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:19:28.35 ID:BFmKl9Djo



 そういうわけで、自由にできる七桁の財を大いなる驚きとともに得て、
 そのお金で最初にわたしが最初にしたことはといえば、高校の屋上でサボり仲間に缶コーヒーをおごることだった。

 九月になって最初の金曜日。

 八月上旬頃は各地で猛暑日が連続したとかなんとかと、天気予報士が額に汗をにじませながら言っていたけど、
 下旬頃から一気に気温がさがりはじめて、残暑なんて言葉は最初からなかったみたいに肌寒くなった。

 季節は手品みたいにあっというまに景色と感覚を塗り替えて、
 おかげでわたしも、半袖で平気で出歩いていた先月までの自分の気持ちがわからなくなってしまっていた。

 急に冷えるようになって、鼻風邪をひいたらしいケイくんは、
 わたしが手渡したあたたかい缶コーヒーを受け取ると、ありがとうも言わずにプルタブを捻って飲み始めた。

「感謝の気持ちがたりないよ」

 とわたしが抗議すると、

「気持ちはあるよ」

 と彼はどうでもよさそうに答えた。




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