8:名無しNIPPER[saga]
2016/07/04(月) 00:21:29.48 ID:BFmKl9Djo
「声に出さないとわかりません」
「感情表現が苦手なんだよね」
「居直らないでよ」
は、とバカにするみたいに鼻で笑って、ケイくんはまたコーヒーに口をつけた。
吐き出した息が白くなるほどの寒さではないけど、先月までの暑さを思うと、世の終わりかとでも言いたくなる。
「居直りっていうかね、これでも表に出してるつもりなんだ」
わたしは呆れて溜め息をつく。
「あのね、ケイくん。わたしたちのご先祖さまとか、いろんな人達が、
そういう表現が苦手な人のためにとっても大切な発明をしてくれてるんだよ。それはね、言葉っていうの」
「はあ」
「それを使うと不思議なことにね、ケイくんみたいな超がつくくらい不器用な人でも、
たった一秒、文字にしたら五字ほどで相手に感謝を伝えられるんだよ」
「うん」
「ご先祖さまは偉大だよね。はい、ケイくん?」
「ありがとう」
「よくできました」
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