802:名無しNIPPER[saga]
2017/10/24(火) 00:44:17.12 ID:IXxsBwaSo
◇
扉が静かに開いた。
灯りは付いているのに、最上階の通路は薄暗く寒々しい感じがする。
わたしたちは箱を抜け出して、通路の先へと進む。
展望台へはすぐにたどり着いた。
ガラス張りの壁の向こうに、街並みはある。
けれど、わたしの目に最初に飛び込んできたのは、そうではなかった。
青褪めた街を背負って立つ、黒い服の女の子。
ざくろは、たしかにそこに立っていた。
わたしたちの姿を認めると、彼女はかすかに微笑した。
「―― そっか。今日なんだね」
その言葉の意味を考える前に、彼女は話を続けた。
「安心して。ちゃんと送り返してあげる」
その表情の、素朴な柔らかさに、わたしは戸惑いを覚える。
今までの彼女はずっと、皮膜の向こうに隠れたような、そんな得体の知れない相手に見えてしかたなかったのに、
目の前にいるざくろは、なんだかひとりの女の子みたいだった。
「……ね、始まるのね。ここから」
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