過去ログ - 開かない扉の前で
1- 20
827:名無しNIPPER[saga]
2017/10/30(月) 00:38:09.29 ID:J5LgB8ivo

「……探した」

 息を切らして、彼はそこに立っていた。

 額に滲んだ汗を拭って、わたしの目をまっすぐに見た。

「なんて顔してるんだよ、おまえは」

 分からない。

 わたしは今、どんな顔をしているんだろう?
 とっさに、俯いて、彼に見られないようにしてしまう。

 どんな顔をしているんだろう。

「なあ、大丈夫か?」

 大丈夫。大丈夫。大丈夫。大丈夫だろうか?
 そんなことを考えて、笑ってしまった。

「……わかんない」

「……なんだそれ」

 呆れたような声が嬉しかった。
 
 探してくれた。見つけてくれた。それが嬉しかった。

 それでなにもかもが十分だと思えてしまうくらいに。
 だから、わたしは、わたし自身がいつか彼に言ったのと同じ言葉を、自分自身に、口にせずに呟いた。
 言葉にしなきゃ、伝わらない。

「……ケイくん」

「ん」

「ありがとう」

 目を丸くしたかと思うと、彼はすねたようにそっぽを向いた。

「どういたしまして」と、彼の口調はそっけなかった。




<<前のレス[*]次のレス[#]>>
992Res/853.12 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice