827:名無しNIPPER[saga]
2017/10/30(月) 00:38:09.29 ID:J5LgB8ivo
「……探した」
息を切らして、彼はそこに立っていた。
額に滲んだ汗を拭って、わたしの目をまっすぐに見た。
「なんて顔してるんだよ、おまえは」
分からない。
わたしは今、どんな顔をしているんだろう?
とっさに、俯いて、彼に見られないようにしてしまう。
どんな顔をしているんだろう。
「なあ、大丈夫か?」
大丈夫。大丈夫。大丈夫。大丈夫だろうか?
そんなことを考えて、笑ってしまった。
「……わかんない」
「……なんだそれ」
呆れたような声が嬉しかった。
探してくれた。見つけてくれた。それが嬉しかった。
それでなにもかもが十分だと思えてしまうくらいに。
だから、わたしは、わたし自身がいつか彼に言ったのと同じ言葉を、自分自身に、口にせずに呟いた。
言葉にしなきゃ、伝わらない。
「……ケイくん」
「ん」
「ありがとう」
目を丸くしたかと思うと、彼はすねたようにそっぽを向いた。
「どういたしまして」と、彼の口調はそっけなかった。
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