833:名無しNIPPER[saga]
2017/11/03(金) 00:21:03.51 ID:lNpLKx20o
階段の先は暗闇で、どこまでも吸い込まれそうな暗闇で、たとえその先に足場がなかったとしても不思議ではないような暗闇で、
わたしは進むことがおそろしくなった。
「なあ、愛奈。おまえに聞いておきたいことがあるんだ」
「……なに?」
彼が声をかけてくれたという、ただそれだけのことが、どうしてか、今は嬉しかった。
そんな内心の動きを気取られたら、鬱陶しがられそうな気がして、わたしは感情が声に乗らないように、声を落ち着かせた。
この暗闇の中で、それが無愛想に聞こえなかったか、それが少し心配だった。
「この先に進んで、帰れたとしてさ」
「……うん」
「おまえ、どうする気だ?」
「……」
どう、する。
その言葉の意味が、わたしにはよくわからなかった。
「どういう意味?」
彼は、わたしの問いかけを一度無視して、暗闇のなかを歩き始めた。
まるでその先に何があるのかを知っているかのような歩調で。
「だって、帰ったら、おまえ、ひとりぼっちじゃないか」
「――」
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