過去ログ - 開かない扉の前で
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848:名無しNIPPER[saga]
2017/11/04(土) 23:55:34.83 ID:rBhi7b25o


「さっき、なんだよ」

 どっちだろう。

 どっちが、幻だったんだろう。

 炎が"明"かりになって、彼の表情を照らしている。

 ライターの火が、蛍の光みたいだと思った。

 蛍なんて、見たこともないけど。

「こんなところで休んでたら、何もかも嫌になっちまうぞ」

「……」

「……おまえがそれでいいなら、それでもいいのかもって、今までの俺なら、そう言ってたかもしれない。
 でも、もうだめだな。そんなふうに気取ってもいられないな」

「……ケイくん?」

「いや、まあ、いいか。……ほら、立てよ」

 そう言って彼は立ち上がり、それから、わたしに向けて手を差し伸べた。

 わたしは―― その手を受け取った。




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