864:名無しNIPPER[saga]
2017/11/11(土) 00:15:23.17 ID:Ch5AfJxSo
さっきまで、僕と話していた彼。
彼の名前は、なんというのだろう。
愛奈がこの世界にいる、と聞かされたとき、僕の頭を支配したのは一種の諦めだった。
もう、何もかもがあからさまに示されてしまった。
僕はもう、愛奈のためになんて言葉を言う資格を失ってしまった。
たったひとりの大切な存在。大切にしてきた存在。大切にしなければいけないと信じてきた存在。
彼女に見抜かれてしまう。
芝居は終わりだ。
彼女は知る。彼から聞いて知る。僕の醜さを、あるいは勘付いていたかもしれない僕の妄執を、彼女は知る。
僕は死ぬ。愛奈にはきっとなにひとつ残せないままで、愛奈のためになにもできないままで、
僕自身すらなにひとつ得られないまま、死ぬ。
僕はこんな姿のままで死んだのだ。
だから愛奈は僕を探しにこんなところまで来なくてはならなかったのだ。
どうしてだろう、はっきりとそうわかった。
街は夕焼けに染まっていく。空は紫を帯びていく。
途方に暮れているわけにはいかない。
僕はどこかに向かわなきゃいけない。
どこかに……でも、どこに行けるっていうんだろう。
僕を迎え入れてくれる場所なんて、はじめからどこにもないのに。
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