866:名無しNIPPER[saga]
2017/11/11(土) 00:16:16.78 ID:Ch5AfJxSo
「少し、話そうか」と彼女は言った。彼女にしては、とても明晰な声音だった。
僕は返事をせずに、彼女の傍まで歩いていった。
彼女は歩き出し、僕はその隣をついていく。
街はよく見知ったはずの空間だ。それなのに、どことなく、異郷のような雰囲気がある。
それと同時の言い知れぬ懐かしさ。
これはいったいなんだろう。
「今朝、夢を見たの」
その溶けるような一言だけで、彼女が僕の存在に驚かない理由が分かった気がした。
「遼一」と、まだ一言も言葉を発していない僕のことを、彼女はそう呼ぶ。
もう、気付いているのだ。
「あなたがやったんでしょう?」
僕は、返事をしなかった。どう返事をすればいいのかも、わからない。
「ねえ、遼一……どうなの」
彼女は、その答えを既にわかっているはずだ。それなのにどうしても、僕の口から言わせたいらしい。
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