過去ログ - 開かない扉の前で
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867:名無しNIPPER[saga]
2017/11/11(土) 00:17:17.22 ID:Ch5AfJxSo

 まるで裁判所みたいだ。

『タルトを盗んだのはあなた?』

 もし問われたら、僕は認めるしかないだろう。

『だったら、首を刎ねないとね。刑が先、判決は後』

 どうせ罪状は否定できない。
 止めてくれるアリスもいない。

「……僕が刺した」

 結局、認めるほかないような気がしたし、そもそも、認めたところで失うものなんてないような気がした。

 たとえ誰が知っても知らなくても、僕自身は知っている。
 そうである以上、僕にとって僕は刺した僕以外の存在ではありえない。

 だったら、他人が知っているか知らないかなんてことは、些細なことだ。

「どうして?」とあさひは続けた。僕は彼女の方を見ない。僕と街の間にはまだ一枚の鱗がある。それが剥がされきっていない。

 僕はそれをどうしたらいい?

「わからない」と、そう答えるしかない。
 でもそれは逃げだ。僕は許せなかった。

 愛奈がいない世界の僕が幸福な顔をしているのを許せなかった。

 どうして?
 それは僕ではないのに。

 いつもそうだ。
 まだ、何か、剥がれていない膜がある。

 そして僕は、できるならそれを剥がさないでいたい。




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