過去ログ - 開かない扉の前で
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881:名無しNIPPER[saga]
2017/11/15(水) 23:48:32.34 ID:lNunJpruo

「たとえば、僕にも好きな子がいた。それが、今よりは強かった希望というものかもしれない。でも、よく考えてみると分からないんだ。
 僕は別に、その子と一緒にいたいとか、どこかへ行きたいとか、何かをしたいとか、そんなことは考えたこともなかった。
 一緒に夏祭りに行きたいとか、クリスマスを過ごしたいとか、あるいは好きな音楽を言い合ったり休日に出かけたりね、
 そんなこと、僕は別にしたくなかったんだ。映画なら一人で観る、食事も一人の方がいい、本の感想なんてあまり言葉にしたいものじゃない。
 そうしてふとわかったんだ。僕には、『誰かと一緒に何かをしたい』って欲望がことごとく抜け落ちてるんだって」

 一人の方が楽だ。

 何処へ行くのも気楽でいい。
 好きなところに行けるし、好きなタイミングで移動できるし、好きなものを食べられるし、好きなときに帰れる。
 気まぐれや気分で行動しても誰にも文句をつけられることがない。

 誰かに気を使って合わせたりしなくていいし、誰かに付き合わされることもない。
 乱されない、揺るがされない。

 乱されないから、誰のことも疎まずに済む。
 誰のことも嫌わずに済む。
 
 どれだけ好きだと思っていた相手だって、何かの事情で、嫌気がさしてしまうことがある。
 落胆してしまうことがある。失望してしまうことがある。

 そんなのはごめんだ。

 僕は、僕の中の誰かに対する思いを、ずっと守っておきたい。
 それを永遠のように保持していたい。

 だったら、知らなければいい。知らせなければいい。
 覆い隠して、見ないようにして、見えないようにして、触れないことで、それは永遠になる。
 
"Mundus vult decipi, ergo decipiatur."




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