過去ログ - 開かない扉の前で
1- 20
884:名無しNIPPER[saga]
2017/11/15(水) 23:50:32.24 ID:lNunJpruo

 僕が考え込んでいる間にあさひは立ち上がった。何かつまむものをとってくる、と彼女は言う。

 僕は返事をしなかった。

 どう考えても間違っている。 
 どこかしら間違っている。どこがというのではない。何かが欠けている気がする。

 数分後、あさひはナッツとキャンディチーズを盛り合わせた皿を持ってきた。
 差し出されたチーズの包みをほどきながら、僕はまだ考えていた。

 僕は愛奈のために生きることで僕自身を認めようとした。
 そうすることが正しいように思えたから、褒められるべき、許されるべきことのように思えたから。
 
 愛奈は僕にとって生きる理由になった。
 生きていていい理由だった。

 逆を言えば僕は愛奈がいなければ怪物の卵に過ぎず――
 つまり愛奈は恰好の理由だった。

 僕が周囲に、僕はここにいてもいい存在なのだと、そう主張するための、彼女は理由に過ぎなかった。

 愛情ではない。

"Peior odio amoris simulatio" 




<<前のレス[*]次のレス[#]>>
992Res/853.12 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice