892:名無しNIPPER[saga]
2017/11/15(水) 23:56:45.58 ID:lNunJpruo
きっと、気にしていない人なんてたくさんいる。
当たり前に、自分を許せる人、認められる人、そういう人もいる。
その人達なりの苦渋に悩まされながら、それはけれども、僕のそれとは、少し違うような気がする。
「……誰かの評価でしか自分の価値をたしかめられないとしたら、それはとても不幸なことだと思うけど」
あさひは、見透かしたようなことを言う。僕はグラスの中身を飲み干す。
たしかに、と僕は思う。自分で自分を肯定できないなら、どこにいっても幸福になれはしないだろう。
どこにいっても、心の底から笑えやしないだろう。
でも――誰にも愛されず、誰にも必要とされず、そんな自分を、どうして肯定できたりするだろう。
「あなたの欲望のなかに、"あなた"はいない。"誰か"の欲望のなかにしか、"あなた"はいない。"あなた"の欲望の中にも、"誰か"はいない。それって、悲しいことだよね」
あさひの言葉は、けれど、僕にはよくわからないままで、ただ、今は小夜の言葉を思い出している。
――ごめん。ちがう。そうじゃなくて、なにか、悩みがあるなら、いつでも……。
――……いつでも、聞くから、って、そう言おうと思ったの。
愛奈。
いつか、愛奈が、僕にとっての小夜啼鳥になってくれると思った。
「――言ってほしい言葉を言ってくれそうな相手を探していただけなんだね」
――あの綺麗な鳥は、もう巣の中で、歌っては居ない。
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