過去ログ - 開かない扉の前で
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946:名無しNIPPER[saga]
2017/11/28(火) 01:14:16.22 ID:OSRTiBSYo

 碓氷遼一が死ななければ、どうなる?

 愛奈は、泣かずに済むだろうか。
 少なくとも、あんなに、自分を責めたりせずに済むんじゃないか。

 時間さえあれば、碓氷遼一と話し合い、わかり合うことができたんじゃないか。

 そう考えれば、俺が取るべき選択なんて、決まっているような気がする。

 ――けれど。

"でも、何かしてしまえば、あなたは……今のあなたは、どこかに消えてしまうかもしれない"。

 消える?

 それって、どういう意味だろう。
 
 頭をよぎるのは、親殺しのパラドックス。

 ここで、碓氷遼一を助けてしまえば、
 愛奈は俺と向こうの世界に行くことなんてなくなり、
 そこであったなにもかもがなかったことになり、
 俺も、こんなところに迷い込まないことになる。
 そして、ここにいる俺がいなくなってしまえば、碓氷遼一を助けるものもいなくなる。

 そうなれば碓氷遼一は死んでしまい、
 そこから先の何もかもがなかったことになり、
 愛奈は俺と向こうの世界に行くことになる。

 そして俺はここでまた碓氷遼一を、助けるか助けないか、選ぶことになるかもしれない。

 それって、どういうことだろう?

"今のあなたは、どこかに消えてしまうかもしれない"。

 ざくろを見れば、その結論は出るかもしれない。

 彼女が時間を無制限に行き交うこともできるように、俺もまたそういう存在になるのかもしれない。
 永遠に、時間の檻のなかに閉じ込められ、そこから脱することができなくなるのかも。

 あるいは、そんなことすらなく、ただ未来だけを変えて、今ここにいる俺だけが消え失せてしまうのかもしれない。




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