965:名無しNIPPER[saga]
2017/12/06(水) 01:35:30.81 ID:IzyndCNto
◇
久し振りに部室に顔を出すと、相変わらず物静かそうな部員たちがこそこそと何かを話していた。
僕は自分の定位置に腰掛け、本を広げた。
二週間。二週間学校に来なかったからといって、変わったことなんてほとんどなかった。
テレビや新聞はさまざまなことをやたらと喚いていたけれど、僕にはそれが実感を伴って迫っては来ない。
今目の前にあること、今僕が過ごしている場所。
そのすべてがなんだか嘘みたいに思える。
定位置に腰かけて本を開こうとしたところで、部長に話しかけられた。
「調子はどう?」
「……特に、変わりないです」
彼女は、相変わらずの妙な笑みをたたえたまま、僕の隣に椅子を持ってきて座った。
「なんだか、落ち込んでるみたいに見えるよ」
「そんなことは、ないです」
「そうかなあ」
「そのはずです」
「はず、か」
部長はくすくす笑った。
「おかしいですか?」
「碓氷くんは、相変わらずおもしろいね」
どこか、おかしかっただろうか。僕にはよく分からなかった。
「はず……うん。はず、ね」
部長はそう何度か繰り返すと、おかしそうに笑った。
「そんなにおかしいですか?」
「そういうわけじゃないんだけど、ちょっと弟に似てたから」
「……部長、弟さんいたんですか?」
「うん。死んじゃったけどね」
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