過去ログ - 開かない扉の前で
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967:名無しNIPPER[saga]
2017/12/06(水) 01:38:05.23 ID:IzyndCNto

 それは、きっと僕が決められることではないんだろう。

「ごめん。今まで、ずっと、何も言ってこなかったのに、突然こんなの、変だよね」

 何も言えない僕に、彼女は言葉を続ける。
 堰き止めていたものが溢れ出るみたいに。

「ね、遼ちゃん。いったい何に巻き込まれてきたの? 神様と同じくらいの力って、いったいなに?」

「……どこで、それを言われたの」

「教えてくれた人がいたの。いつのまにか、いなくなっちゃったけど」

「……そっか」

「そういえば……」

 何かを思い出したように彼女は顔をあげて、それから、言いづらそうに口を歪ませた。

「……ね、何か、声が聴こえたりした?」

「声?」

「聴こえなかったなら、べつに、いいんだけど……」

 声。

 小夜には、全部話すべきかもしれない。僕がしたこと、僕が見たこと、僕が行った場所。
 信じてもらえないだろう。それでも、すべてを語るべきだという気がした。

 僕が、逃げ出したことを。

「少し、長い話になると思う」

「……うん。大丈夫」

「声は……たぶん、聴こえたと思う」

 小夜は、その言葉に、安心とも動揺ともつかない、不思議な表情を浮かべた。

「そっか。……聴こえたんだ」

 それから僕は、長い、長い話をした。
 
 僕が、人を刺すまでの話を。




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