過去ログ - 開かない扉の前で
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985:名無しNIPPER[saga]
2017/12/11(月) 01:05:16.57 ID:S5mn3zpLo

「……なあ、なんか」

「なに?」

「ちょっと、変わったか?」

「……そう、かな。そんなこと、ないと思うけど」

「いや、でも」

「もしかしたら、気分が変わったからかもしれない」

「気分?」

「もう少し、信じることにしたから。いろんなもの」

「……そっか」

 わたしは立ち上がった。校舎の向こう側から、楽しそうな声が聴こえる。
 こことそことの距離は、ほんの少し、遠い。

 でも、今はべつに、ここでいい。このままでいい。

 わたしは、切り株の上に膝を揃えて載せて、彼の首筋に自分の腕を回した。
 肩に頭をのせてみたら、彼はくすぐったそうに身をよじった。

「なんだよ、急に」

「べつに、なんでもないよ」

「……敵わないな、ホントに」

 そんな声が、当たり前に帰ってくることが、今は嬉しくて仕方ない。
 彼には、それがちゃんと分かっているんだろうか。
 
「ケイくん」

「……なんだよ」

「……おかえりなさい」

 彼は、おかしそうに笑って、それから、首筋にまわしたわたしの手の甲を、指先で撫でた。

「……ただいま」




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