141: ◆FlW2v5zETA[saga]
2016/08/04(木) 16:56:10.30 ID:iV9Di2Df0
そして1時間半程過ぎた頃。
「ケイちゃーん、今どの辺?」
「もうちょっとしたら例の峠入りますね。ちょっと寄り道して、一息入れましょう。」
そうしてケイは、とある所にバイクを停めた。
道の駅と呼ばれる、観光地によくあるドライブインの一種だ。
休憩も目的だが、ケイの目当ては観光案内のパンフレット。
峠の観光地では、携帯では回線が弱い事もある。
こうした所にあるパンフレットの類は、ライダー達にとっては強い味方なのだ。
「お。ユウさん、足湯までの通り道、まさに紅葉スポットみたいですよ。」
「へー、いいじゃん。楽しみだなぁ。あ、ちょっと売店見てかない?」
「そうですね、お土産でもあれば。」
二人が売店へと入ると、よくあるお土産コーナーが広がる。
地域の名産を使った様々なお菓子や保存の効くつまみ、そしてとある一角を見て、北上はケイの肩を叩いた。
「へー、ご当地キャラだって。かわいいー。」
「確かにかわいい。結構ぶさいのも多いですからね。」
「ねえねえ。」
「どうしました?」
「このストラップ2個買ってこうよ。ケイちゃんとアタシの分でさ。」
購入したストラップを、北上は早速自分のリュックに付けていた。
一方ケイはといえば、どこに付けたものかと思案中。そんな彼の顔を見て、北上はある提案をした。
「キーケースに付けたら?それならいつもカバンの中だしさ。」
「あー、その手がありますね。」
そしてキーケースからぶら下がる小さなぬいぐるみを見て、北上は満足そうに笑う。
互いが普段身に付ける道具に、お揃いのものが付いた。
それが彼女には、堪らなく嬉しかったのだ。
道の駅を出て、バイクは一路峠へと入る。
辺りが木陰に包まれるのに合わせて上を見上げれば、二人の視界には一面の紅葉が。
そして更に峠を登ると、今度は道路から、遠くに広がる海と、秋の色に染まる山々が見えた。
停車スペースにバイクを停め、二人はしばしその光景に見惚れていた。
各々普段は、硝煙とオイルに塗れる日々。
そんな騒がしい日々も、目の前の美しい光景に暫し忘れられたような。そんな気がしていた。
「はぁ、これぞツーリングの醍醐味かな。絶景ですね。」
「ねー。こんな良いところだなんて知らなかったよ。あ、そうだ。写真撮ろうよー。」
北上はケイの腕を掴むと、携帯のインカメラを立ち上げた。
ちゃんと周りの風景と二人が写るよう、彼女は体をグイッとケイに寄せる。
そして撮られた、満面の笑みで写る二人の写真。
それは彼女にとってまた新しく増えた、楽しい思い出となった。
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