過去ログ - 北上「離さない」
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323: ◆FlW2v5zETA[saga]
2016/09/27(火) 00:25:57.04 ID:WF6dBkOu0


「ケイちゃん、かぁ……今頃忘れてるよね。」


こうやって財布から古い写真を取り出して、ぼーっと眺めるのが日課になってる。
小さい頃住んでた街にいた、1コ下の近所の男の子。

あの街に住んでた頃は、いつもコウちゃんも入れて一緒に遊んでさ……楽しかったなぁ。
「ぼく、ユウねえちゃんとけっこんするんだー。」なんて言ってたっけ。

今どんなんなってるかな…この歳で改めて写真を見ると、おっきくなっても結構可愛い顔してそうだけど。
助けてくれる王子様になってくれないかなー、なんて。

……何考えてんだろ、アタシ。悲劇のお姫様気取りかよー。こんなんなって、今更会いになんて行けないしさ。

アタシの親族は、一族で水産関係の仕事をやってた。
アタシが6歳の時、お父さんも家業に参加する事になって、元いた街を離れて。

結局、そうしてあの街に固まってたから、近い親戚もみんな死んじゃったんだよね。
いつも一緒だった中学からのグループも、やっぱり同じでさ。
隣町からうちの高校に通ってた子達とも、こうなっちゃえば疎遠で。

もう、まともにアタシと関わってたのなんてケイちゃんだけかもなぁ…。
ああ、卒業したら、会いに行こうとしてたんだっけ……。
ぼっちだなぁ…あはは……あーあ、調べ物でもするかぁ。

そうやってスマホを開いて、調べるのはいつもの地図と土地の写真。
最初は自殺の名所とか調べてたけど、その分見回りが厳しいらしくてね。
アタシの日課は、こうして人に見付からない死に場所と死に方を考える事だった。

かわいそうだなんて、思われたくなかった。
無縁仏か、或いは自殺と思われないか。いっそ死体すら見付からないか。そんな死に方が良かった。

ああ、そうだ…例えば軍の施設に忍び込んだらどうだろうか?
そこでちょっと暴れれば、上手くいけば射殺してもらえて、身寄りの無い泥棒として処理してもらえるかもしれない。

そうやってアタシは、近くの軍事施設はどこか調べようとして、海軍のホームページに辿り着いた。
それで施設の項目を調べようとした時……アタシは、とある小さなバナーを見付けたんだ。


「艦娘適正検査、被検者募集……?」


確かニュースで、適合する素質がある女の子しか装備を使えない…って言ってたっけ。
そっか…それじゃ軍の女の人だけじゃ限界があるから、一般募集も…大々的じゃない辺り、きな臭いねー。
でも危ない仕事だもんね、下手すりゃ死んじゃうし……ん?死んじゃう?

……そうだ、これだよ!
適正が出ればあいつらに仕返しも出来て、上手くいけば合法的に死ねる!

希望なんて感覚は、あの日以来久々に感じた。
アタシはすぐに資料請求のメールを送って、暫く心の底から湧いてくる喜びに浸っていた。

みんな、待っててね……あいつら殺せるだけ殺して、アタシもそっち行くからさ…。
だからそれまで、見守って……。


そしてアタシは、タンスの上に手を伸ばして。







一欠片ずつ、3人の骨を飲んだ。









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