過去ログ - 北上「離さない」
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325: ◆FlW2v5zETA[saga]
2016/09/27(火) 00:31:44.25 ID:WF6dBkOu0


2時間後、同市内。こちらはケイの住む地区。

着替えを済ませ、彼は暫し近所を散歩していた。
てくてくと歩き、すぐに辿り着いたのはとある家。

売りに出され、今は借家となっている、かつての幼馴染達の家の前。
主に近隣で増改築がある際に貸し出されているが、今は誰も借りていない。

ぽつりと、彼は独り、その家の前に佇んでいた。


ふと目を閉じれば、様々な記憶が蘇る。

もう顔も正しく思い出せない程昔。
しかし様々な事をして遊んだ記憶は、今も彼の中で、大切な思い出として残っている。

本当の姉弟のようだったな、と、寂しげに彼は微笑む。

ケイより一つ下の弟の方とは、よくこの家の前でサッカーをしたものだ。
一つ上の姉は色々な場所を知っていて、あちこちへ3人で探検に行った。

もし成人した今、再会出来ていたなら。
その頃の事を、笑って話せたりしたのだろうか。

そして彼の中で、いつかの血塗れの壁が蘇り。
彼の掌は、ぎりぎりと張り詰めた音を立てている。


「ユウ姉ちゃん、コウタ……仇は絶対に取るからな…。」


かつて四六時中放っていた、憎悪に囚われた目をしている事に、彼自身は気付いてはいない。
そんな時、不意に彼の携帯が震えた。


『お疲れー。今日の作戦無事終了だよー。親方、相変わらず美人だねー。』


そのメッセージは、北上からのもの。
電柱に寄りかかり、彼はそこへの返信を打ち込んで行く。


『お疲れ様です。大丈夫ですか?親方に殴られてません?』
『親方が厳しいのはケイちゃんにだけだよー。そっちどう?ゆっくりできてる?』
『おかげさまで。今近所を散歩中ですよ。』
『遊び行ったりしないの?』
『この後地元の奴らと飲みですね。』
『そうなの。』


淡々と、やり取りは続く。
そして立て続けに北上から来た、とあるメッセージを目にした時の事だった。






『その飲みってさ。女の子、いる?』






その瞬間、ケイの背筋には強烈な悪寒が走った。





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