過去ログ - 北上「離さない」
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342: ◆FlW2v5zETA[saga]
2016/10/06(木) 04:40:18.77 ID:FtLTPb5v0

1月9日。□□市民会館。


…より、徒歩15分程の写真店。
客が多く出入りする中、とある緑がかった銀髪の女が、今しがた撮影を終えた。

身軽にスーツと言うのも手だが、一生に一度。どうせなら晴れ着が良い。
慣れない着心地に手こずりながら、両親と別れた彼女は、一路会場へ向けて草履を鳴らしている。

冬の乾いた空気には、カラコロと鳴る足音はよく響く。
本日は快晴、雪の痕跡も無し。
意気揚々とホール前へと向かい、彼女は目当ての人物を見つけた。


「ケイくーん、おはよー。」
「お、バリさんか。気合入れてんなー。」
「……何だろ、すごい違和感。」
「言うなよ…ただでさえこの顔でこのガタイなんだから…。」


元が177cmに対して童顔と言うアンバランスなスペック故か、ケイはスーツ姿に対して自信が無い様子。
実際誰が見ても着こなせていないのだが、これはこれで、と夕張は微笑んでいた。


“ふふ、かーわいい。ああ、でもリアクション薄いなぁ…こんにゃろめ。”


「ケイくん、この後の予定は?」
「夜に中学の同窓会あるぐらいだな。」
「じゃあさ…後でお昼食べ行こうよ。」
「いいよ。すぐ終わるみたいだし。」
「了解。あ、じゃあ私席違うから、また後でね。」


式そのものは、中学単位で席が振られていた。
それぞれ違う席へと向かい、夕張は誰だ?とちらちらこちらを見てくる同級生達に、何とも言えない居心地の悪さを感じている。


“髪の色で分かれよなー…故郷でこそぼっちかぁ。まあいいか、ケイくんいるし。”


夕張の位置からステージ手前の方に視線を送ると、友人と楽しそうに談笑をするケイの姿。
何とも言えない気持ちに駆られつつ、始まった式の退屈なスピーチの数々に、夕張はしばし呆然と過ごしていた。

式が終わり、ホールの前には大勢の新成人達が、各々思い出話に花を咲かせていた。

中にはガラの悪そうな男や、昔それなりにヤンチャをしていた女もいる。
あまり関わりたくないな、と思っていた時、ポンと彼女の肩が叩かれた。




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