346: ◆FlW2v5zETA[saga]
2016/10/06(木) 04:50:54.09 ID:FtLTPb5v0
「すいません、写真撮って貰ってもいいですか?」
「いいですよ。成人式ですか?彼女さんお綺麗ですねー。」
「ああ、違いますよ。高校の同級生でっ!?」
「あ、ごめんケイくん。踏んじゃった。」
「ふふ、じゃあ撮りますよー。」
境内を背景に、晴れ着姿の二人が画面に収まる。
それはどこかあどけなさやぎこちなさの残る、まさにこれから成長して行くであろう二人の写真だ。
そんな姿に、撮影を頼まれた女性も思わず微笑んでいた。
「ありがとうございました!」
「どういたしまして。……お姉さん、頑張ってね。」
女性は去り際に、そう夕張に耳打ちをしてその場を後にして行った。
“そっか、少なくとも、浅い関係なようには見えてないんだ……。”
そう思うと、少しだけ勇気を貰えたような。
そんな気がして、夕張は改めて微笑みを深くしていた。
「後で送るねー。」
「了解。ここに初詣は初めて来たなー、いつも近所の神社だったしさ。」
「ねえねえ、さっき何お願いしたの?」
「戦争に勝てますように、ってね……まあ、終わった後に色々やりたい事出来たし。尚更。」
「お?なになにー?」
「幾つかあるけど……いやー、言うの?笑うなよ?
そうだなー、まずは戦争終わらせて…そしたらさ……」
これは夕張にとっては、とても嬉しい事だった。
少しずつでも、ようやく彼が未来を生きようとし始めた。
その兆候が、やっと見え始めたのだから。
その一言を、聞くまでは。
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