529: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/03/10(金) 08:17:02.71 ID:B2GRHGId0
「ここやな……メロンちゃん、降りる前に装備全確認。
ゴーグルとマスクはええな。作業着の下に着てもらったチョッキ、ちゃんと締まっとる?サバゲ用やけど、無いよりマシや。それと渡した7つ道具の場所も。
うちが先入るから、後を付いてくる事。ワンゾーン動く度合図出す、それまでは先に出んようにな。」
「はい…!」
彼女達は、遂に件の家に辿り着いた。
庭越しに見える、穴の開いたリビング。
そこにはケイの話通りの、赤茶けた壁が二人を出迎えている。
3年半が経過し、鮮血が退色した今尚も、その夥さだけは生々しいままだった。
ここで起きた惨劇を想像し、夕張は息を呑んでいた。
「一応言うとくけど、この家におるとは限らん。あいつの車見付けてへんからな。
まず、一番怪しいとこから探してくって寸法や…まぁ、おったらおったで、音でもう気付かれとるやろ。
メロンちゃん、降りる前にも一個確認や。こう言う片田舎の危険性、キミなら分かるやろ?」
「危険性…家庭の凶器ですか?」
「せや。斧にノコギリ、果てはチェーンソー。
田舎は武器になるもん置いとる家多いでな、缶の防御モードは常に入れとき。」
「…はい。」
缶の防御モードとは、使用者の任意により、全身を膜のように覆うバリアだ。
しかしそれも、完璧ではない。相手によっては切れたり貫かれたりはせずとも、殴られるのと同程度のダメージが来る事もある。
例えば、相手が同じく缶を使用している艦娘などであった場合だ。
龍驤の助言を受け、缶を入れたウェストポーチのベルトを、夕張は入念に締め直していた。
同時に、自身の心も改めて締めるように。
「準備はええか?車降りた瞬間行く。はい、3、2、1……GO!」
車のドアを開けると同時に、二人は真っ先に玄関へと駆け寄る。
まず龍驤が瞬時にトラップの有無を見極め、GOサインを出した瞬間、続いて階段を駆け上がった。
2階には、扉が3つ。
それらは左右に1対2で振られていたが、龍驤は迷わず右奥の部屋へと近付く。
“子供部屋やったら、まずベランダと反対側や…埃はこっちの方が動いとる、ここでクロやな。”
夕張にサインを出し、彼女を後ろへ付かせる。
龍驤の拳銃は、利き手に合わせ右腰のホルスターに。
左手がドアノブへと伸びる。ゆっくりと、音を立てぬようノブが回されて行く。
右手は拳銃に。そしてノブが回りきり、一気に扉が開かれた、次の瞬間。
「げっほっ!?」
二人を出迎えたのは攻撃ではなく、部屋中を覆い隠す色とりどりの煙。
その煙の中、奥の方にわずかに光が見えていた。窓だ。
幸いゴーグルは、二人の目だけは守っていた。その窓にうっすらと、人を担いだ影が見える。
髪をミディアムにまで切った、だが、見間違えようも無い影。
「北上さん…!」
「ふふ、夕張ちゃん…バーカ!!」
二人が窓の方に駆け出した時には、北上はケイを担いで飛び降りた後。
2階から飛び降りた勢いでそのまま隣家の屋根へ飛び乗り、北上はそのまま30mほど離れた家へと着地する。
そしてそこのガレージから、勢いよく白い車が飛び出して行く。
リモコンスターターにより、予めエンジンが掛けられていたのだ。
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