531: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/03/10(金) 08:23:09.59 ID:B2GRHGId0
「この工場、結構でかいな…ちと、覚悟決めた方がええかもしれん。
なあ、例えば銀行みたいなデカいとこで立て篭もりあったとして、制圧作戦を立てるとする。そゆ時、何が必要になると思う?」
「制圧作戦……見取り図ですか?」
「せや。例えばこれが銀行強盗とかやったら、大元や系列店に頼んで見取り図もらって、どこから入るか、内部はどうなっとるか、そう言う算段も立てられる。
それこそ下水からの潜入や、窓からの状況確認と突入だって出来るわ。
でも今この状況は…なかなか危険やな。ここの内部データが何も無いし、知っとる奴もおらん。」
「………まずいですね。」
「厳密には、知っとる奴が一人おるがな……ほれ、あっこの壁んとこ見てみぃ。サッカーボール落ちとるやろ?あいつの弟、あそこ借りてよう練習しとったんやろ。
ここに越して来たん、6歳ごろらしいな。裏を返せば…その頃から、あいつの遊び場やったって事や。」
「じゃあ…北上さんは、内部を知り尽くしてるって事ですか…。」
「せや。今のうちらは、初見でバイオやるようなもんや。
実戦でも本来こう言う作戦は、先に偵察入れるけど……今のうちらは、二人っきりやで。」
先程以上の緊張感が、二人を襲う。
入り口はいくつもある。
搬入口、事務所経由の通路、倉庫への勝手口。
そして、施設内の区画もまた同じく。工場と倉庫、事務所からなるこの施設の、一体どこに潜んでいるのか。
二人はまず、一番隠れる場所の少なそうな事務所から入る事とした。
ガラス扉を開け、更に廊下の扉を開けると、広がるのは荒れ果てた薄暗い事務所だ。
いくつかの窓には穴が開き、壁には砲撃の跡。
机や書類には血痕が残っており、床には人が倒れていたであろう、大きな赤いシミがいくつかある。
事務所奥には社長室があり、ここで北上の祖父が仕事をしていたらしい。
机と椅子には、やはり血痕が残っていた。
「見取り図無いかな…ん?」
引き出しの中には、種類ごとにファイリングされた資料がある。
だが、『設備関係』とラベルの貼られたファイルのみ、中身は抜かれているようだ。
舌打ちをしてファイルを戻した時、龍驤はある事に気付く。
「なぁメロンちゃん、この短時間でここまで隠滅できると思う?普通こんな状況なら、ケイ坊隠す方優先するやろ。そう言えば北上の奴、冬休み何しとった?」
「旅行に行くって言って、3日ぐらい空けてましたね。」
「ここに来とったって事やな……。」
見取り図が手に入らない以上、ここにこれ以上用は無い。
扉を開け、再び事務所へと出た時の事だ。
「落ちとるのも納品書ばっか…ん、あの机、妙に綺麗やな?」
不自然に空いた机には、カサカサに枯れた花束と、紙が一枚置かれていた。
ざっと見た時、そこには見覚えのある字が、殴り書きで走っている。
そしてそれを手に取り、ちゃんと目を通した時。
二人を、衝撃が襲った。
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