592: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/03/27(月) 01:37:27.19 ID:GaYLTJCKO
それは冬に故郷で聞いた幻聴と、同じ言葉。
だが、以前のくぐもったものではなく、今度ははっきりと聞き取れた。
一瞬だが、ケイの目の前にはいつかの肉塊ではなく。
『彼』の成長した姿であろう、とある少年の、寂しげな微笑みが映った。
それを見聞きした時。
ケイの意識の天秤は、遂に現実へとその秤を振り切る。
そして、激しい感情が彼を襲った。
“…………ふざけんなよ。
ユウ…お前がバケモノなら、俺は何なんだよ……俺が、誰に救われたと思ってんだよ…!
コウタ、分かったよ……今度は、俺があいつを……!”
肉体そのものは、まだ薬の副作用に侵されていた。
だが意識を取り戻した今、彼は自分の手の中に、ある物が握られている事を理解出来た。
龍驤は夕張に銃を託した際、とある助言を彼女に与えていた。
“ケイ坊見付けたら、まずは全身の拘束解こうと思わん事や……途中で北上に襲われる可能性あるからな…。
ええか…最初に手首の拘束から解いて…次に、渡した道具の内の……
___隠しナイフを握らせるんや。”
仮に途中で失敗した際でも、人質が自力脱出出来る可能性を上げる為の手段。
拘束が解かれているのは、手首のみ。
そして今、彼の手には夕張により隠しナイフが握らさせられていた。
視界の先には、再び殴り合う彼女達の姿。
その手前、彼から近い位置には____
隠しナイフを開き。彼はまず、胴への拘束にナイフを入れ始めた。
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