610: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/03/28(火) 03:34:33.76 ID:T7wuw/an0
「ケイ、ちゃん……?」
彼の目は、真剣そのものだ。
それは戦時中、整備の際に見せていた顔と全く同じ、射抜くような鋭い目。
「はぁ…はぁ……。」
息が荒くなるのを、北上の肺は感じていた。
刃先が薄く肌を切り、ケイの首筋にわずかに血が滲む。
それを目にした彼女の中を、様々な激情が駆け抜ける。
興奮と黒い衝動が、獣の如く声を上げる。
“ここで彼を殺せば、永遠に彼は自分のものだ”と。
「どうした?これで俺はお前のもんだぞ?
やれるもんならやってみろ、お前に出来るならよ。」
挑発するように、ケイはニヒルな笑みを浮かべた。
そうだ、このまま刃先を深く刺せば、その欲望は叶う。
このまま切り裂いて、命を奪えば__
震える刃先。
35.8℃の液体が、今まさにこぼれようとしている。
その液体が、床に溢れる時。
『からん……。』
ナイフも、同時に床へと落ちた。
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