612: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/03/28(火) 03:36:45.89 ID:T7wuw/an0
「……だから言ったろ?お前はそんな奴じゃない。何がバケモノだ…じゃあ、俺は何なんだよ?
俺さ、あそこに来た頃は、心の底からは笑えなかったんだ。
お前に出会って、初めてちゃんと笑えた気がした。それ以外じゃ、それこそ俺の兵器が殺した奴の死体を見た時ぐらいでさ。
あのままだったら、今頃どうなってたろうな……俺の方が、よっぽどバケモノだったんだよ。
それを人間に戻してくれたのは…いつもそばにいてくれたのは、お前なんだ。
ユウ…ずっと、気付いてやれなくてごめんな。苦しかっただろ?ひとりぼっちで……。」
「ううん…もう何年も前だもん……アタシも、写真持ってたからケイちゃんの事すぐわかったぐらいで…。
でも…怒ってないの?アタシ達のせいでケイちゃんは、そんな風に…でも、アタシは生きてたのに、ずっと黙ってて…。」
「……どの道、俺はあの件がある限り、この道を生きてたよ。
そうでなくても、大勢の命が奪われたんだ…例えばユウ達が引っ越してなくても、俺は軍にいたと思う。
だから、お前が気に病むことなんて何もないんだよ。」
「ケイちゃん…。」
「ユウ、改めて言うよ。聞いてくれ。」
彼は北上から腕を離し、その両手を彼女の肩に掛けた。
真っ直ぐに向き合わせるように。
そして、自分もそこから目を逸らさないように。
自覚できるほどの、緊張の色が浮かぶ。
今までの人生、今日が一番緊張する日なのかもしれない。
だが、これこそが彼の人生の。
そして彼女達の人生にとっての、祝砲となるのだ。
深く息を吸い、遂に心のトリガーは引かれる。
644Res/552.40 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。