9:名無しNIPPER[saga]
2016/07/07(木) 20:36:26.88 ID:Mi73gln00
運ばれてきたパンをちぎってスープにつけた。
「今日のまゆの演技は良かった。本当に」
「うふふ、ありがとうございますね。まゆ、プロデューサーさんに褒めてもらえなかったの気がかりだったんですよぉ」
「でもさ……」
このことを切り出すのは気が進まなかった。俺の中のなにかが、俺とまゆの関係が壊れてしまいそうで。
「あれは演技だったのか?」
「もちろん演技です。私の運命の人は目の前にいますから」
まゆはそう言って少し笑った。スープの中のパンは赤く染まっていく。
「そうか……なら良かったよ」
「うふふ、プロデューサーさんはなにを心配しているんですかぁ?」
「なんていうか……」
俺の心配は悪魔の存在証明みたいなものだった。まゆの言葉を信じることが出来ればなにも問題ない。それが出来ないという自分が嫌だった。俺自身が醜いものに感じてしまう。
「まゆはあなたのことをアイしていますから。でもまゆはアイドルです。アイドルでいる間は……」
「そうか。アイドルでいる間は佐久間まゆ。だもんな」
「ええ、アイドルが誰かを愛することは出来ませんからね」
この話はここで終わりにすればいい。そう自分に言い聞かせてみる。そろそろ来るはずのメインディッシュを待ちながら他愛のない話をしていればいいはずだ。食事を終えていつものように女子寮に送ればいい。
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