過去ログ - 【安達としまむら】そらのかけはし
↓ 1- 覧 板 20
1: ◆FRtTimAs0A[saga]
2016/07/07(木) 20:48:07.68 ID:KlUH777Eo
安達さんもしまむらさんも出てきません。
【安達としまむら】みずいろはなび
ex14.vip2ch.com
↑過去作です。
SSWiki : ss.vip2ch.com
2: ◆FRtTimAs0A[saga]
2016/07/07(木) 21:21:01.45 ID:KlUH777Eo
「さーさーのーはー、さーらさらー」
赤、青、緑、黄色。
くしゃっとしたリース作りも、毎年やれば上手になるものである。
3: ◆FRtTimAs0A[saga]
2016/07/07(木) 21:54:51.78 ID:KlUH777Eo
そんなことヤチーに理解してもらえるなんて思ってはいなかった、けど、そんな切り返しがあるなんてもっと予想できなくて、目をそらしてしまう。恥ずかしい。
はあっと一呼吸ついて前を向くと目の前にヤチーの顔があって、「わぁ」もうなにがなんだかわからない。
「きれいだと思ったら、近くで見たくなりまして」
4: ◆FRtTimAs0A[saga]
2016/07/07(木) 22:41:27.85 ID:KlUH777Eo
いきなりぬめっとした感触がほっぺを伝って、あやうくはさみを取り落としそうになる。
これなのである。最近のヤチーは放っておくとすぐ調子に乗ってどんどん近くに入り込んできてしまう。テレビで話題のパーソナルスペースなんて、どこ吹く風だ。
一見すれば作り物のような瞳がわたしを覗き込む。瞬間、氷のいっぱいはいったジュースが喉を通り抜けるような、めまいのする涼しさに襲われる。
二十八度設定のクーラーじゃ、とても太刀打ちできないくらいの気持ちよさ。
5: ◆FRtTimAs0A[saga]
2016/07/07(木) 22:57:25.95 ID:KlUH777Eo
――
日が傾いてあたりが薄暗くなった頃、わたしはおかーさんと一緒に町内会の七夕祭りに出かけた。もちろんというか、ヤチーもついてきた。
「びゅーん、びゅーん」
6: ◆FRtTimAs0A[saga]
2016/07/07(木) 23:08:25.65 ID:KlUH777Eo
「むかしむかし、織姫と彦星という恋人たちがいました」
「ほぅほぅ」
「二人はとても仲がよく、真面目に仕事をしていました……」
7: ◆FRtTimAs0A[saga]
2016/07/07(木) 23:12:27.32 ID:KlUH777Eo
そんな、おとぎ話なんだからー。
って、軽いノリで流そうとして、わたしがヤチーについて何も知らないことに気づく。本当に、ありえないなんて言い切れるのかな。
突飛で、明るくて、謎だらけで、でも嘘はなさそうで、大好きなともだち。
そんなヤチーの、何を、わたしは知ってるの?
8: ◆FRtTimAs0A[saga]
2016/07/07(木) 23:20:56.57 ID:KlUH777Eo
「しょーさんが、まっててくれるなら……えぇ、もちろんです」
「もぉ……それでこそヤチーだよっ」
9: ◆FRtTimAs0A[saga]
2016/07/07(木) 23:27:53.01 ID:KlUH777Eo
祭りから離れてるとはいえ、壁も仕切りもない、こっちを見られたらばれる。何よりヤチーは目立つ!
冗談じゃない。友達にでも見られたら大変だ。
ヤチーが歩く不思議生物なら、わたしはそのお付き人になってしまう。ご近所のうわさものだ。外を歩くたびにヒソヒソ後ろ指を差されてしまうのは避けたい。
いやそれもあるけど。
こんなこと家族にばれたら大変だし! 恥ずかしい。
10: ◆FRtTimAs0A[saga]
2016/07/07(木) 23:30:55.02 ID:KlUH777Eo
「んちゅっ」
「お、おぉ? おぉー」
11: ◆FRtTimAs0A[saga]
2016/07/07(木) 23:39:31.32 ID:KlUH777Eo
「あめだー」
「わーいわーい」
なぜかはしゃぎだすヤチーをしっかりとつかまえて、にぎやかな灯りのほうへ急ぎ足で戻る。
12: ◆FRtTimAs0A[saga]
2016/07/07(木) 23:44:04.10 ID:KlUH777Eo
「そういえば、雨だからまた織姫と彦星会えないねー」
「そうなんですか?」
「そうらしいよー。雨で川のかさが増えて橋が渡れなくなっちゃうんだって」
13: ◆FRtTimAs0A[saga]
2016/07/07(木) 23:52:51.73 ID:KlUH777Eo
「はい、どうぞ」
「う……わぁ……」
暗闇から目が慣れるまでの数秒間、その間にすらすでにその非現実的な輝きをイメージとして感じ取ることができた。
14: ◆FRtTimAs0A[saga]
2016/07/07(木) 23:56:44.82 ID:KlUH777Eo
――
今日のしまむらさん
おやケンカか? 珍しいな。第一印象はそれだった。
15: ◆FRtTimAs0A[saga]
2016/07/07(木) 23:59:40.34 ID:KlUH777Eo
――
ネコ飼いたいなぁ。
って、ネコの番組を見てると毎回口に出してる気がする。
でも本当に飼いたいのだからしょうがないのだ。だって可愛いし、癒されそう。
16: ◆FRtTimAs0A[saga]
2016/07/08(金) 00:03:07.84 ID:PbaMaqrPo
「……なんでそうなるの、ヤチー」
「ん?」
わたしの目の前に広がるのは柔らかい髪ではなく、深い水色の瞳だった。その瞳がわたしの向こう側の、答えを探す。
17: ◆FRtTimAs0A[saga]
2016/07/08(金) 00:06:13.47 ID:PbaMaqrPo
「みえない!」
「むぎゅー」
肩をぐっと押してヤチーを丸めて抱き込むと、風船から空気の抜けるような音がした。丸まった背中がネコみたいだ。
18: ◆FRtTimAs0A[saga]
2016/07/08(金) 00:12:35.26 ID:PbaMaqrPo
やたらと誇らしげな顔でわたしを見つめる。背中丸まっててかっこ悪いぞ。
何がまだまだなのかよくわからないがよーするに、わたしがテレビを見るのを邪魔したいのだろう。得意げな表情がわたしのとーそーしんを刺激した。受けて立とうじゃないか。まだCMには時間があるので、姿勢を戻してテレビに集中する。むん。
「うぅー」
19: ◆FRtTimAs0A[saga]
2016/07/08(金) 00:40:55.82 ID:PbaMaqrPo
顔は見えなくても不満そうな声は聞こえる。次どうしようか探しているみたいで、体がソワソワと動いている。
……あ、なんか、これ、いい。全身になまぬるい満足感が広がっていく。
思い返してみれば、わたしはいっつもヤチーに振り回されっぱなしだった。
ヤチーの行動はいつも突然で、へんてこで、わたしはそういったものに流されやすいからあれよあれよという間にすっかりヤチーのペースに乗せられてしまうのだ。
うちの家族(わたし除く)もなかなかのマイペース力だと思うけど、ヤチーのそれは比べ物にならないほどずば抜けている。「」
20: ◆FRtTimAs0A[saga]
2016/07/08(金) 00:46:47.29 ID:PbaMaqrPo
頭突き再び、かと思いきやお手手を腰に回して、いわゆる……抱きついてきた。ちょっとバランスを崩して後ろ手を付いちゃう。少しリクライニングな姿勢になってしまった。
き、きにしない、きにしない。この程度、へっちゃらだ。むしろドンと来いなのだ。
この体勢になると、改めてヤチーの身体のしなやかさに気づく。胸もお腹もピッタリくっついて、顔だってこんなにも近い。女子としてはうらやましい柔らかさだ。どきりとして、少し、目線をそらしてしまう。
「んー……しょーさんの、においー」
21: ◆FRtTimAs0A[saga]
2016/07/08(金) 00:48:50.88 ID:PbaMaqrPo
「や、ヤチー、こうさ、ひゃうっ! こうさん! まけ!ん、んっ、わたしのっ!」
「はふー?」
き、聞こえないフリとか、いいから! そゆの!
35Res/30.61 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。