6:名無しNIPPER[saga]
2016/07/09(土) 00:25:50.29 ID:Px08eZlJ0
「学校はどうだ?」
「仕事はどう?」
食い気味に被せてくる。意地悪く笑う。
茶化すのが好きなのかもしれないし、単純に聞かれるのが嫌だったのかもしれない。
どちらかは分からなかったが、かつて僕も親に似た質問をされた時に気恥ずかしさで返事を誤魔化していたのを思い出す。
明確な理由はなかったけれど、正直に答えるのはむず痒さがあったのを覚えている。
「ぼちぼちだよ、そっちは」
痒くもない鼻の頭をかいて、少しだけ嘘で濁した。
プロデューサー業を辞めて、新しくスタートさせたのは芸能業界とはまるで違う、経済に関する仕事だった。
やっと二年が経ち、仕事も慣れてはきたけれど、自分が今いる場所はどうにも馴染むことができていない。
しっくりとしない何かがいつも体に付きまとっていて、その違和感を捨てる勇気もないままに中途半端を彷徨い続けている。
彼女は僕の態度に何かを感じ取ったのか、それ以上話を掘り下げようとはしなかった。
居心地の悪さを感じて「そっちは」と繰り返し強調してしまう。
怒ってないはずなのに自身の口調に釣られて、胸の中がささくれだった。
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