7:名無しNIPPER[saga]
2016/07/09(土) 00:33:20.22 ID:Px08eZlJ0
声に反応して、彼女はめんどくさそうに顔を背け、また溜息をつく。
彼女は溜息の似合う子だった。
それは僕と一緒にいるときの記号のようなものでもあったから、ただの僕の勘違いなのかもしれないが、呆れや諦めといった感情は彼女らしさの一つだと思っている。
彼女の金髪が窓から光に流され、整った顔立ちは憂いを帯びている。言いようの無い魅力が場を支配する。
かつて、目の前の彼女はアイドルで、自分はプロデューサーだった。たった数年前のことがはるか昔のようだった。
言った通り僕と彼女の相性は最悪で、お互い私生活などについて踏み込みはしなかったが、仕事での衝突は余りにも多く、言い争うこともしばしばあった。
だいたいそれも、僕の一人相撲だったけれど。
ただ最近は、少し違えば僕と彼女の歯車も噛み合っていたのかもしれないと考えることもある。
少なくとも僕らの望む先は高くなく、彼女の目標はぐうたらな生活で、僕の目標は彼女をしっかりとサポートすること。
それは今も変わってはいない。
あたたかく重い水の中に沈められたと錯覚するほどに、息がしにくかった。
「彼氏とか出来たか? 学生だろう」
学生だからなんだというのだろう。
けれど、密やかな緊張に支配されまいと、言い慣れない言葉が思わず口をついてしまう。
彼女が目を丸めてこちらを向いた。
妙な舌触りに口が乾いても、注文したコーヒーはまだやってこなかった。
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