20: ◆NdSwyytUJslS[saga]
2016/07/15(金) 22:24:44.92 ID:2Lq8bAWao
2ヶ月ほど前の夜、同僚の金切り声が廊下に響いた。
何人かが慌てて駆けつけてみると、声の主は鏡の前に屈み込み震えていた。
そして鏡を見ると、そこにはまるで血を指でひいたかのような文字でこう書いてあった。
《助けて そこにいる私は偽者です》
皆、その文字を読み取るに多少の時間を要した。
なぜならそれは字の向きも並びも左右反対だったからだ。
あまりの不気味さに誰も言葉を発する事ができない中、一人だけ前に歩み出る者がいた。
『馬鹿馬鹿しい悪戯ね……「私」って誰の事よ』
彼女こそ『高山』さんだった。
美人というタイプではないけれど、おっとりとした性格とそれに見合った可愛らしい容姿で誰からも好かれる人だった。
高山さんは洗面台に備え付けられた化粧落としのシートを2枚引き出し、それで鏡を拭こうとした。
『つまらない事で大声なんか上げないで頂戴』
屈み込む同僚にそう吐き捨てた高山さんの声や表情は、今まで誰も見たことのないものだった。
そう、それはまるで──
『あら? ちっとも落ちないわ、どうしたのかしら』
『ねえ……これ、鏡のガラス内面に書かれてるんじゃ……』
『ふん、手の込んだ悪戯ね』
──正反対の性格をした別人のように感じられた。
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