1: ◆ksPx5/M7Wg[saga]
2016/07/18(月) 22:22:23.00 ID:+OtJikMc0
・吉岡沙紀ちゃんのSSです
・前作(沙紀「ワルツ・ワルツ」 ex14.vip2ch.com )の続きですけど、単体でも読めます
SSWiki : ss.vip2ch.com
2: ◆ksPx5/M7Wg[saga]
2016/07/18(月) 22:24:59.23 ID:+OtJikMc0
その日は珍しく道を変えて事務所に向かってた。
特に理由なんてなくて、単なる気まぐれに任せて歩いてた。
変わらない毎日のちょっとした刺激だ。
3: ◆ksPx5/M7Wg[saga]
2016/07/18(月) 22:28:05.21 ID:+OtJikMc0
だけど、今日はどうだ。
この発見はプラスに働くものなのかな?
4: ◆ksPx5/M7Wg[saga]
2016/07/18(月) 22:33:09.44 ID:+OtJikMc0
まず最初にアタシを襲ったのは驚きだった。
よくよく考えたらプロデューサーもいい大人で、別に見た目が悪いわけじゃないんだから、恋人のひとりやふたりいたっておかしくない。
街中で腕を組んで歩いたって、すこぶる健全だ。
5: ◆ksPx5/M7Wg[saga]
2016/07/18(月) 22:33:54.30 ID:+OtJikMc0
ただひとつ気になってることがある。
どんな流れだったのかは忘れたけど、前にプロデューサーのことを聞くことがあった。
あぁ、そうだ、アイドルはファン商売だから表面的に恋愛はどうのって話だ。
6: ◆ksPx5/M7Wg[saga]
2016/07/18(月) 22:35:00.23 ID:+OtJikMc0
関係ないじゃん。
そう言っちゃえば終わることなのに、なんで言えないんだろう。
なんでもやもやが晴れないんだろう。
7: ◆ksPx5/M7Wg[saga]
2016/07/18(月) 22:37:10.86 ID:+OtJikMc0
「沙紀ちゃん」
突然名前を呼ばれて反射的に振り返ると、扉からひょっこり顔を出していたのはさっきまでレッスンをしていたトレーナーさんだった。
8: ◆ksPx5/M7Wg[saga]
2016/07/18(月) 22:38:21.79 ID:+OtJikMc0
わかりました、そう言うとトレーナーさんは「明日また頑張りましょう」って、柔らかい笑顔をアタシに向けてきた。
割れちゃいそうなくらい膨らんでた気持ちはみるみるしぼんでいった。
「じゃあ、お疲れ様」
9: ◆ksPx5/M7Wg[saga]
2016/07/18(月) 22:39:52.36 ID:+OtJikMc0
「そうですね……」
なにか言葉を探すように視線を床に落として、数秒経ったあとに目と目が合った。
10: ◆ksPx5/M7Wg[saga]
2016/07/18(月) 22:41:38.77 ID:+OtJikMc0
おかしくなったきっかけははっきりしてる。
はっきりしてるんだけどどうしようもなくて、事務所のソファに意味もなく寝転がってみる。
誰かが買ってきたハート型のクッションを抱えて。
11: ◆ksPx5/M7Wg[saga]
2016/07/18(月) 22:42:31.76 ID:+OtJikMc0
「なにかお悩み?」
悩みがわからなくって悩んでる、というか。
12: ◆ksPx5/M7Wg[saga]
2016/07/18(月) 22:44:52.26 ID:+OtJikMc0
「こんにちは」
聞いたことがある声だなっておもってた。
13: ◆ksPx5/M7Wg[saga]
2016/07/18(月) 22:46:05.58 ID:+OtJikMc0
いや、あの、知ってる、知ってるっす。
「吉岡沙紀ちゃん」
14: ◆ksPx5/M7Wg[saga]
2016/07/18(月) 22:49:39.38 ID:+OtJikMc0
アイドルってものに詳しくないアタシでも、この人の名前と顔は完璧に一致する。
モデル業から歌手活動、最近ではバラエティでも見ることが多くなってきたトップアイドル。
前からプロデューサーには、運が良ければ会える、なんてレアモンスターみたいに言われてたけど、現実なんてこんなにあっけないものなのか。
15: ◆ksPx5/M7Wg[saga]
2016/07/18(月) 22:51:47.19 ID:+OtJikMc0
「それで」
顔がぐいっと近づけられてにおいが強くなった。
触れたくなるくらい綺麗で白い肌に、吸い込まれそうな瞳はアタシをそこに閉じ込める。
16: ◆ksPx5/M7Wg[saga]
2016/07/18(月) 22:53:45.42 ID:+OtJikMc0
「大丈夫?」
どこに置くことが正解なのかわからない目線、びっしょりかいた手汗、言葉だけ健忘状態ってなんて都合のいい。
17: ◆ksPx5/M7Wg[saga]
2016/07/18(月) 22:55:07.81 ID:+OtJikMc0
「ご、ごめんなさいっ。変な声出しちゃって」
「ううん、私が勝手にやろうとしたことだもの。こちらこそごめんなさい」
18: ◆ksPx5/M7Wg[saga]
2016/07/18(月) 22:56:16.61 ID:+OtJikMc0
「無理に言わなくても大丈夫」
「え?」
19: ◆ksPx5/M7Wg[saga]
2016/07/18(月) 22:58:00.77 ID:+OtJikMc0
「あ、あの……」
「うん?」
20: ◆ksPx5/M7Wg[saga]
2016/07/18(月) 23:00:30.07 ID:+OtJikMc0
「ということっす……」
話が終わって、ひとつ大きく息を吐く。
緊張からかそれとも話し続けてたからなのか、口の中はカラッカラになっていて、机の上に置いてあったペットボトルのお茶を流し込んだ。
21: ◆ksPx5/M7Wg[saga]
2016/07/18(月) 23:02:17.35 ID:+OtJikMc0
「ふんふん。なるほどねぇ」
楓さんは八分咲きの笑顔のまま、こっちを見てゆったりとした間隔で何度かうなずいた。
その意味がよくわからなくて、頭の上にハテナマークを浮かべてると「そうねぇ」って話を切り出してきた。
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