110: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/08/17(水) 11:01:00.60 ID:90KdAnqB0
速水さんは丁寧に包装を開けていく。気に入ってもらえるだろうか。緊張で心臓が高鳴った。
筒状の箱を開けた彼女は、少し驚いたように息を吐いた。
「……綺麗」
プレゼントは小さな三日月のペンダントがついたネックレス。一目見て、速水さんに似合うだろうと迷わず購入した。
「嬉しい、ありがとう。ねえ、つけて」
速水さんは立ち上がって俺に背を向ける。どうしたって腕を回す必要があるわけで。
ぐっと縮まる距離。
レッスン後、シャワーを浴びたのだろう。シャンプーの香りが鼻腔を通して脳を刺激する。
か細い首と見慣れないうなじ。艶のあるさらさらな黒髪と女性特有の柔らかそうな体躯。
そのすべてが俺の理性を麻痺させる。
このまま抱きしめてしまいたい。衝動に駆られたが、俺は中学生かと自嘲してどうにか自制心を保った。
「できたよ」
くるっと振り返った速水さんの首元には三日月が煌めいていた。予想以上に似合っていて、俺は自分の目が間違えていないことに嬉しくなった。
「どう、似合う?」
「ああ、似合うよ。本当に、似合ってる」
鞄から鏡を取り出してネックレスを確認した速水さんは、満足そうにうなずいて口元を緩ませる。子供っぽい笑みだった。
「これでキスがあれば完璧ね」
「ほう、つまり朝まで付き合えと。けしからんですな」
「ちょっとっ、解釈に悪意があるわよ」
紅潮させて笑う速水さん。俺もつられて笑った。
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