118: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/08/17(水) 11:47:10.93 ID:90KdAnqB0
ステージ袖に移動する最中、
「すげーな……お前、なにしたんだよ」
感嘆したようにため息を吐いた先輩は、神妙な面持ちでそう言った。
「みんなの言うとおりでした。簡単なことだったんです。俺はただ奏を信じたんですよ。余計な思考を一切放棄してね」
「……なるほどなぁ。それは私じゃ駄目だったんだろう。あるいは信じきれていなかったか」
「さあ、どうでしょうね。こう言うのってきっかけわかりませんし」
先輩は首を横に振る。確信を持っているように見えた。
「お前と速水は似てるんだよ。もちろん性格の話じゃなくて、境遇というのかな。前の会社を辞めた理由、そこだろ」
「……まあ、そうですね。どんなに仕事しても給料は上がらないし、残業代も出ない。嫌になりますよねそういうの」
効率化すれば仕事が増えるだけ。いくら努力しても評価はされず、忙しくなるばかり。そしてさらに努力を求められる。
そんな環境に、俺は逃げ出した。
「お前はどうして速水をプロデュースしようと思った? 私が連れてきたからか」
「もちろん、それもあります。仕事ですからね。選り好みはしませんよ。でも……」
顔合わせをしたときを思い出す。きっと、あのときにはもう、俺はおかしくなっていた。
「俺は目の前でもがき苦しんでいる女の子をどうにかしたいと思ったんです。仕事以上に、個人的に」
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