119: ◆U7CecbhO/.[saga]
2016/08/17(水) 11:49:05.95 ID:90KdAnqB0
感情を持ち込めば、絶対にどこかで失敗する。見落とすし見誤る。だけど、その考えに固執することこそ感情的だったのかもしれない。
「たぶんさ、そう言うのってわかる奴にしかわからないんだろうな。少なくとも、私にはわからなかった。速水が上手くいかない理由も、あいつが苦しんでることも」
「俺だってわかりませんよ。傲慢だったのかもしれません。結局、俺ができたことなんて本当に些細なことですしね」
「いや、結果がすべてだ。私には速水を輝かせられなかった。お前にはそれができた。それだけだよ」
速水奏の輝かせ方は信じるだけだった。信じて期待すれば、彼女は応えてくれる。
月が陽光を反射し輝くように、俺らの信頼や期待を自分の輝きに変える。速水奏はそういう女の子なのだ。
先輩はにかっと微笑む。清々しい明るい笑みだった。
「なにはともあれお疲れ。そしてありがとう。まず間違いなくいい結果になるよ。どうする、プロデューサー続けるか?」
「ここでそれ訊きます?」
「ははっ、そうだな。結果が出てからでいいよ」
ステージ袖に到着する。そこには奏が満足そうな表情を浮かべて立っていた。
「ほら行ってこい。お姫様はお待ちだぞ」
「……あんた、なにを聞いた? ……いや、なにを話した」
「さあな。いいから行けって」
とんと背中を押され、不承不承歩き出す。奏と視線が合う。彼女は微笑む。俺は片手を挙げた。
こうして、俺と奏の定例ライブは幕を下ろした。
◇
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